ほっとタイムASAHI

【2005〜2006】 【2007】 【2008】


【07年11月】
「地域とともに」

動物たちと健康な生活を共にするには治療よりもやはり予防が大切です。
私たち西宮市獣医師会では動物病院で来院された動物の治療を行うだけでなく定期的に勉強会、
症例検討会を開き横のつながりを持ち個人および動物病院全体のスキルを上げる努力をしています。
来院されない方々にも動物病院外で活動を行うことで動物のいる生活を再認識していただき動物の健康を
再認識してもらうよう努めています。
具体的な予防活動としては狂犬病予防のための集合注射があります。
毎年
10月頃には甲山墓苑にて亡くなった動物たちへの感謝と哀悼の意をこめて動物慰霊祭を行っています。
西宮市内の小学校を回りウサギなどの学校飼育動物について飼育環境の見直しやむやみに数が増えないように
不妊手術を行い、子供たちにはわかりやすく動物の身体の仕組みや動物との接し方を説明し、
ただ掃除をして餌を与える毎日ではなく改めて命の大切さを理解してもらう活動をしています。

動物を飼っていない人にも楽しめるものとして西宮市では市の主催、獣医師会や動物愛護センター等の
共催により毎年「動物愛護フェア」が行われています。
長寿犬・猫の表彰、ワンちゃん参加のイベント、パネル展などで人と動物の共生を感じてもらおうというものです。
今年は
1123日西宮浜マリナパークで実施されますので動物を飼っている人もいない人もお時間のある方は
見に来てください(参加無料)。詳しくは獣医師会所属の動物病院へお尋ね下さい。


【07年9月】
「歯の大切さ」

生きていく上で欠かせない食事をするために重要な「歯」。
動物で歯が悪くなると私たちが虫歯で泣いている以上の怖いことが起こっています。
「口が臭い」と来院されたワンちゃんの口をのぞくと奥歯は元の歯が埋もれて見えない位に歯石が付着して
取ってみると歯の根元が溶けてしまっている、なんて事も珍しくありません。
放っておくと痛いだけでなく歯の根元から心臓に細菌感染を起こしてしまうこともあるとても怖い状況なのです。
歯石除去や抜歯には通常全身麻酔が必要です、まれに麻酔がなくても引っ張っただけで抜けてしまうような
歯もあります。
その位で抜ける歯の根元はどんなに弱っているのだろうと想像してみてください。

犬や猫以上に歯が大切な役割を持つ動物として「生涯伸び続ける歯」を持った小動物がいます。
リス、ハムスター、プレーリードッグは前歯だけが伸びますがウサギ、チンチラ、モルモットでは奥歯も
生涯伸びる歯です。
彼らは種子や野菜、牧草といったものを前歯で小さくして奥歯でよくすりつぶして食べます。
その時に上下の歯がこすれあって適度な長さを保つのです。
これがケージなどを噛んだり転落などで歯が折れたりすると歯の噛み合わせが悪くなり上下の歯が大きく
ずれてしまいうまくご飯が食べられなくなってきます。
また、噛む回数が少なくてすむ柔らかいフードばかり食べていると奥歯が伸びてきて細く尖り口の中や舌を
傷つけてしまい痛くて食べたくても食べられない状態になってしまいます。
歯の根元の方が悪くなるとアゴや目の下に膿がたまったり特にプレーリードッグなどで上の前歯の根元が
悪くなると鼻がつまって呼吸もままならない状態になってしまうことがあります。
そうなると根治は困難で少しでも進行を遅らせるような維持を生涯的に続けていかなくては
なりません。
当院でもそういった症状の動物とがんばっておられる飼主さんが何人もおられ、病気と戦う労力と愛情には
頭が下がる思いです。

犬や猫なら定期的なブラッシング(液状やジェル状の歯磨き用品もあります)、
ウサギなどでは与えるフード、ケージなどの環境を考え治療よりもやはり予防第一で考えたいですね。




【07年7月】
「動物にもダイエット」

今巷ではとあるエクササイズビデオが大流行していますね。
動物にも肥満があります、といっても自然の動物には肥満はなく家庭で飼われている動物に限ります。
犬や猫はもちろん、上から見るとまん丸のハムスター、太りすぎて丸まれないハリネズミ、
脂肪がつきすぎて羽の隙間から見える肌が黄色くなっているセキセイインコ
etc.
肥満になることで関節への負担、心臓や様々な内臓疾患を引き起こします。

人間の肥満は自己管理の問題ですが動物が肥満になる原因はほぼ飼主さんにあります。
1:
「食餌に対する知識不足で内容や量など不適切な食事を与えている」
2:
「欲しがるので与えている」
3:
「大して欲しがっているわけでもないが飼主の満足感のため与えている」
他にも「病気が原因」「多頭飼育のため個々が管理できない」などでで太ることもありますがほぼ先の
3つになるでしょう。
1は正しい知識を得ることで改善が見られることが期待できますが2と3に関しては困難な場合が多いです。
なぜかというとこれらのケースで減量を考えるときにネックになるのは他でもない飼主さんだからです。
「与えない我慢」ができないのです。動物の体によくないと知っていても「欲しがるんだからあげたらいい」では
飼主失格です。

動物はおいしければ毒でも食べます。
毒とまでは言わなくても多量に与えることで健康を損なうのであればやはり与えるのはやめてあげて下さい。
「もらえるまで鳴き続けるので『仕方なく』与えている」と弁解することもあります。
「与えないと怒って噛み付いてくるので怖くて与え続けている」という方もいました。
それらの状態は人間の親子で例えると「おもちゃ屋の前で駄々をこねて動かないので仕方なく買い与えている」
「出さないと暴力を振るわれるので怖くて金品を渡している」状態なのです。

飼主としてどう行動すべきか、飼われている動物は自分で食料を調達することができません。
食事で健康を損ねるのも飼い主さん次第です。
しつけと密接な関係もある食事の与え方をよく考えて動物たちの健康を守ってあげてください。


【07年5月】
「最後の時」

生きとし生けるものすべてに等しく訪れるもの「死」。
私事ですが先日我が家で飼っているメスのプレーリードッグが
7歳で永眠しました。
腎不全であることは去年からわかっていたのですが
4月に入ってから急激に弱ってきて
その後約
1週間病院で治療していましたがいよいよという段階で妻の希望もあり自宅につれて帰り
翌日に妻の腕の中で永眠しました。

入院を続けていればもう少し長い時間を生きたかもしれませんがそれでも治ったり自宅と比較して明らかに
長期にわたる延命ができたわけではないので結婚前からその子を飼っていた妻の希望を尊重したかたちとなりました。
人間でも終末医療は様々な意見がありますが特に動物は自己主張ができません。
最期の時を予感する動物では結局は飼主さんの希望するところが目標となります。
「どこまでの治療を行うか、できるか」「時間、手間、費用をどこまでかけてあげられるか」
「飼主さんは何を希望しているのか」「その希望は感情的なものでしかないものではないのか」
「病院側の治療の提示は無理強いではないのか」「今は危ない状況だけどもう少しがんばれば回復する可能性はあるのに」
「手術をすれば治るのに・・・」
「もう残された時間はわずかなんだから家で看取ってあげたらいいのになんで連れて帰ってあげないんだろう」と
葛藤の中で行われます。結局は飼主さんにしろ病院側にしろ結果に対する自己満足なのかもしれません。
それでも私たちは治療を行った事がお互いに良かったと思えるように、
「ああすればよかった」「こんなことしなければよかった」「もう二度と動物は飼わない」と
飼主さんに後悔の念を与えないように、最終的に亡くなった子に
「これでよかったんだね、今までどうもありがとう。またいつか新しい子を飼ってもいいかな?」と
思えるような対応ができればと思っています。

【07年3月】
「狂犬病ワクチン接種のすすめ」

4月は狂犬病ワクチン接種の季節です。
屋内外の飼育に関わらず
生後90日以上の犬には接種・登録が義務付けられています。
狂犬病といえば昨年
36年ぶりに日本国内で2例の狂犬病が発症したという報道は記憶に新しいと思います。
海外で狂犬病の犬に噛まれて帰国後発症したというもので感染した方は二人とも亡くなっています。
狂犬病は人間に感染、発症すれば致死率の高い恐ろしい病気です。狂犬病予防法に基づきワクチン接種を義務付けたことで
日本での感染発症はなくなっていました。
ところが日本人の悪い体質で震災を経験した阪神間の人でさえ各家庭の防災の意識が薄れてきているように
狂犬病はもはや対岸の火事と思ってか年々ワクチン接種率が下がってきていました。
中には「かからない病気のために注射するなんてかわいそう」と接種を拒否する人もいる次第です。
そんなところでの去年のニュースは狂犬病を考えるいい機会だったのかもしれません。

人間にワクチンを打っておけばいいと思う方もいるかもしれませんが
現状として日本における人間用の狂犬病ワクチンの在庫は渡航する人用に確保する位で「全く」足りていません。
もし本格的な流行が起きたらその被害は甚大なものとなるでしょう。
そうならないために犬を飼っている飼主さんはぜひ接種を受けに行ってください。
(年度が変わるので
4月になってから受けに行ってください)
集合注射を毎年
4月に行っていますが雨天でも乾燥して風が強くホコリまみれであっても屋外で実施している状況は
衛生面であまり良くないという見地から動物病院での接種を推奨します。
動物病院では年間を通して実施しており費用は基本的に集合注射と同額です。



【07年1月】
昨年は「命」と表現された年で色々な命に関する出来事が報道されました。
その中には動物のニュースも多く見られ、ドッグパークが廃業し取り残された多くの犬の話や
崖っぷち犬、
西宮市でも夙川公園で木の上から降りられなくなった猫、
海外で感染した狂犬病の発症のニュースなど日本人の動物に対する関心の高さが伺えました。
(今あの猫は有志の方のお家で保護されているそうです。)
そんなニュースが報道された後に「あの子を引き取りたい」という問い合わせが多く寄せられ
譲渡会が開かれて新たな飼主のもとで第二の生活を始めてよかったね、という後日談があります。
ニュースを見てかわいそうな動物を引き取りたいと思う気持ちは大切です、
しかしわざわざ県外まで引取りの問い合わせをしなくても身近なところで引取りを待っている犬猫が
たくさんいるということをご存知でしょうか?

市役所の動物管理センターというところでは毎日のように「不用」とされた犬猫が持ち込まれ
わずかな期間の勾留の後殺処分されています。
2005年のデータでは
1年間に約40万頭の犬猫が動物管理センターで殺処分されました。
これは毎日
1000頭以上が処分されている計算になります。
私の病院のある
西宮市では500頭の犬猫が処分されました。
そのうちの
435頭が猫でさらにそのうちの348頭が子猫です。
猫が多いのは不妊手術をしないまま自由に外出させたり
「お腹をすかせて可哀相だから」と餌を与えて野良猫を集めて交配の機会を増やし
結果として野良猫を増やしているからです。

動物管理センターでは定期的に譲渡会を行っています。
二度と不幸な生活をおくることのないようにペットショップで購入するよりも審査基準は厳しいですが
興味のある方は一度お住まいの地域の動物管理センターへ問い合わせてみてはいかがでしょうか?
今年は処分される数が
1頭でも少なくなるような年であればと思います。


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